第87話
□
「着いたよ」
ナツキさんに言われて、窓の外へ目を向ける。
車の中からでは、当然、天辺まで見上げることができないけれど、その建物がかなり大きくそれでいて、高く造られているということはわかる。
外に出て、首が痛くなりそうなほど、その建物を見上げながら、あたしは息を呑んだ。
こんなに立派な高層ビル、普通に生きていて来ることなど滅多にないだろう。
「さ、行こっか」
ナツキさんが横目であたしを見て、そのまま歩いて行く。
あたしも出来るだけ遅れないように、その後をついて歩いた。
ガラス張りの中に、様々な観葉植物や小さな噴水のようなものが設置されたエントランスを抜けて、ロビーへ踏み入れる。
従業員の人たちが一斉にあたしたちに頭を下げるので、びくと肩を揺らしたが『いけない』とあたしはすぐさま背筋を正した。
おどおどしてはダメだ。驚くことがあっても、感情を殺さなくては。
少しでもはしたない真似をしてしまっては、どんなお咎めを食らうかわからない。
「緊張してる?」
「い、いいえ」
今日は、あくまで下見。
本番でもないのに、緊張なんて許されるはずがない。
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