第86話
「何それ、理解出来ない質問だね」
訝し気な顔で、すぐに答えるナツキさんを見て、あたしは「あ……いえ」と、すぐに続けた。
「そう、ですよね。すみません……変なことを聞いてしまって……」
やはり、聞くべきではなかった。誰しもがナツキさんのような反応をするだろうし、
答えなどいくら考えても、ここには存在しない。
頭を下げて、話を切り上げるようにして、あたしは視線を窓の外に向けた。
けれど、ナツキさんは続きを話すように「ま、」と口を開いた。
「自分ではそんなことしないけど、やる人はいるんじゃない?」
「……それって」
今一度ナツキさんを見て、「どういう、ことで」と続けてしまう。
「んーそうだなあ。気晴らし、間が差した、とか気分の問題かあるいは」
車の冷房が、足の間を吹き抜けた。
そのせいで、些か背筋が冷えたように感じたのは、
「執着、復讐、愛憎、そういった心の問題もあるんじゃない?」
気のせいだろうか。
―――水波さん、と。
あの人が、あたしに向ける眼差しを考えた。
光を忘れたような、まるで無感情に動いているような、
そんな、冷ややかな目の奥に。
「小宵ちゃんへのぴったりな答えとしては」
一体、何があるのだろう。
「後者かな」
何、が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます