第84話
こんなことに思考を巡らせても、意味は何一つないのだ。
再び食事を口に運び始めるあたしを、ナツキさんは静かに眺めていた。
そうして、わかんないな、と彼が呟いたような気がして顔を上げたけれど、
「美味しい?」と誤魔化されてしまい、あたしはただ「はい、美味しいです」と答えるしかなかった。
□
会場へはナツキさんと向かうことになった。
八神さんは先に向かっているらしい。
正直、安堵する。車の中では、逃げ場がないようで息が詰まるから。
ナツキさんと車の中で向かい合うように座りながら「小宵ちゃんは青系も似合うんだね、色が白いからかな」とさらりと告げるので、あたしは慌てて「い、いえ」と首を振った。
「ナツキさんが選んでくれた服が素敵だから、そう、見えるだけです」
「そうかな。元がいいんだと思うよ、自信持ったら?」
「そっ、れは……あまりにも、勿体なき、お言葉で……」
「はは、何その反応」
軽く笑って、ナツキさんは肘置きで緩やかに頬杖をついた。
どちらかと言えばいつもカジュアルなのに、向かう場所が場所だからか、服装が少しだけかっちりとしている。
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