第81話

朝食時、ナツキさんがあたしを呼んだ。


機嫌がいいのか、食事の他に、フルーツまでカットしてテーブルに置いていた。



「今日、会場行くんだったよね。おめかししよっか」



テーブルに頬杖をつきながら、ナツキさんは言う。


首を振って「そんなこと……」と口を開こうとしたけれど、「誰かに会ったらどうすんの?」と遮られてしまった。



「多少は整えてないと、アヤちゃんも怒るんじゃないの」


「……そう、ですね」



それはそうだろう。


どんな場所であろうと、彼の傍に立つということは、完璧を意味する。



不意に、ラップがかかっている皿が目に入った。櫻田さんのものだろうか。


「シキくんのだよ」


ナツキさんに言われて、顔を上げる。目が合うと彼は緩く微笑んで「あのさ」とその口を動かした。



「レセプションどうだった?りっくんたちも行ったんでしょ」


「あ……はい……」


「アヤちゃんはどういう感じだった?」


「どう、とは」


「あの家で」

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