深閑の朝焼け

第77話

随分懐かしい夢を見ていた。目元に置いた腕を下ろし、ゆっくりと身体を起こす。


カーテンから漏れる仄かな光が、時間は着々と進んでいるんだと嫌でも伝えているようだった。


結局、昨日の夜ごはんも喉を通らなかった……せめて、水ぐらいは飲まないといけない。


時間は朝四時を回った頃だ。この時間なら、まだ誰もいない筈だ。こっそりと外に出て、廊下を急いで歩いた。


シン、としたこの建物は、どこか孤独に感じる。どこも立派な造りで、あたたかみがあるようだけどやっぱり無機質にも思えた。


簡単に朝の支度をして、いそいでダイニングのある部屋へ向かった。ガラス戸の向こうは真っ暗だ。誰もいない。


お水だけ貰って部屋に戻ろう。


ちゃんと休まないと、きっと明日の準備で今日も忙しくなるだろうから。



冷蔵庫の隣にある棚の下を覗き込む。


確かナツキさんがペットボトルもあるって言ってた。


こそこそと探っていると、たくさんのペットボトルが入っている段ボールを見つけた。


一本だけ拝借して、急いでその部屋を後にする。



そんなに時間は経っていないはずなのに、廊下から見える中庭は先ほどよりも明るくなっていて、太陽が着々と昇っていることを教えてくれていた。

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