第75話
凄い人だなと思った。茶道をしているからか、姿勢がとてもいい。けれど、それに反して派手な見た目が洸瞑ではかなり珍しいなと思った。
ピンクっぽい、ベージュっぽい髪色をしたその人は、恐らくその学年で一番目立っていたと思う。
みんなの視線を一気に集めて、凄い人だなって、こんな風に、あたしもなってみたいなって……思えば、獅戸さんはあたしの憧れの人だったのかもしれない。
自己紹介の途中、あたしの声は小さくて先生に何度も「もっと声を出せますか?」と言われたことを覚えている。焦りながらなんとか頑張ったけれど、不審がられて終わってしまった。
もしこのクラスに、あたしのことを小等部から知っている人がいたらきっと笑われていたに違いない。……あんなに練習したのに、うまくいかなかったな。
沈んだ顔をしていると予鈴が鳴る。休み時間になりほっとしていると「ねえ」と隣から声をかけられた。
「きみ、結局なんて名前なの?」
「ぇ、」
「なーんも聞こえなかったんだけど」
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