第74話

「えっ、なんで!?こんなに可愛くて格好いいのに……!」


「子ども騙し。可愛くはない」


「どっ、どこでそんな言葉を……!」



飾利さんがいなくなってからも、春明さんと伊吹はあたたかな家庭でずっとあたしを支えてくれた。自然と笑顔が戻るまで、一年。そしてその頃には、あの時の記憶がすっかり曖昧になっていた。


小等部から中等部に上がる頃、友達というものに憧れた。小等部の時は、友達なんて作る資格がないと思っていたから。中等部になると、支え合う関係と言うものは良い物だと思った。


いつか、あたしにもそういう人が出来たなら、全力で力になってあげたいし全身全霊で支えてあげたいと思う。


人生、そう上手くはいかないけれど。







「獅戸立夏でーす。よろしくお願いします」



緩い挨拶が隣から聞こえた。洸瞑学院の生徒数は多いけれど、獅戸という名前は聞いたことがあった。入学式、一年生の時、彼はあたしの隣の席で緩い口調で自己紹介をしていた。


ラフなスタンスは受けがいいらしく、みんなの反応がかなり良かったことを覚えている。

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