第70話

頭を優しく撫でて、少し背を屈める。「小宵ちゃんが思ってくれるなら、十分幸せだもの」と、微笑むその姿にあたしは目を瞬かせた。


なんだかむず痒い気持ちになりながら、どうしてそんなことを言うのだろうと思った。



「ふたりのこと、よろしくね」




見上げながら、視界の中で光が舞った。いや、光じゃない。雨が降ってきたんだと思った。


……いや、違う。これは雨でもない。


これは、


「お、かあさん?」


飾利さんの涙だ。


「ふふっ、小宵ちゃんにお母さんって言われると、嬉しくて涙がでちゃうなぁ」


笑いながら飾利さんがぽろぽろと涙を零す。


白く細い指では拭い切れぬまま、地面に落ちていく。


まるできらきらとした星屑は、飾利さんの気持ちを表しているようで、あたしも自然と涙が目から零れ落ちた。




「あら……どうして、小宵ちゃんも泣くの?」


必死に首を振り、「っわ、わからない」と声を上げる。だって、涙がただ勝手に零れるから。


「あ、たし」


「ん?」


「おかあさんも、すきです」



言わなきゃ、今。


いま。


いま、



「すきですっ、だいすきです、だいすき、なんです……っ」



春明さんも伊吹も飾利さんも、みんなみんな。

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