第65話
「わ、わかりません……でもっ」
姿勢を変えて、身を乗り出すようにして少し距離を縮めると、彼が今度は後ろに身体を反らす。
「あたしもまた、あなたに会いたいです!」
「……」
「だから、また絶対、どこかで会えますよ」
にっこり笑えば、彼は寸秒ほど考えたあと、「絶対?」と少し疑うように眉を顰めた。
「絶対!」
「じゃあ、約束して」
小指を差し出されて、思わず目を瞬かせたあとあたしはその指に自分の小指を絡ませた。
「約束です」
微笑みながらそう言えば、彼は少なからず安堵したような顔をした。
同時に廊下の方で足音がする。大きさからして大人だろう。ここで隠れていられるのも時間の問題だ。
外を窺うようにして、廊下へと顔を覗かせる。左右を見ても今のところ、誰もいない。
「今のうちに!」
こそっと告げれば、彼は少し浮かない顔のまま部屋の外へ出て、そうしてこちらを振り返った。
「一緒に行かないの」
「も、もちろんいきます」
隣に並べば、彼は暫くこちらを見たあとそのまま顔を逸らした。
彼が歩こうとしないので、暫し迷った末にその手を引き「いきましょう」と言うと、彼はまたこちらを見て音もなく頷いた。
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