第63話
なんだろう。
今にもぽっきり心が折れてしまいそうなほどの、切実さを感じるのに。
その芯はまるでしっかりしていて、揺るがない強ささえ感じる。
綺麗で、儚げで、どこか浮世離れをしているところは、いなくなってしまった〝母〟を重ねてしまいそうになるのに……。
とても不思議な男の子だと思った。
「でも」とさらに彼の口が動く。はっとしたあたしは「え、」と反射的に声を零した。
「なんで助けて、くれたの」
「え、」
「放っておけば、よかったのに」
ぽつぽつと言葉を零す彼が、申し訳なさそうに視線を逸らす。
「それは……」
勝手に足が動いていた、というのはあまりにも簡単な理由過ぎるだろうか。
たくさんの大人たちの中で、庇う人も支える人もおらず、ただ、床に膝をついて頭を下げるその姿が自分と重なってしまった。
いろんな理由があるけど、言葉に出来ない。
結局この子を助けたのは、自分のためのような気がしてならなかったからだ。
「か、ってに、足が動いてました。なんていえば、いいのか……」
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