第59話

会場より少し離れた通路までやって来る。


すると前から何人か人が歩いてきて、あたしは慌てて角を曲がった。


そして、すぐ傍にあった部屋の扉を押す。


会場から離れた場所を子どもだけで歩いているのは、傍から見たらおかしいだろう。


その上、あれだけ目立ってしまった手前、下手に誰かに会わない方がいいと言うのもわかる。






慌てて入った部屋の中から、廊下の様子を伺う。ふう、と一息つこうと思った時、手を繋いだままの男の子のことを思い出した。


はっとして振り返る。ただ静かにそこに立っている彼は、少し俯きがちに視線を落としていた。


あたしは……もしかしたら、この子にとってかなり迷惑をしてしまったかもしれない。



「っ、ぁ」



小さく声を零せば、黒髪の隙間からゆるりと目線が動かし、その子が少しだけ視線を上げた。


少し長い前髪のせいで、表情が読み取りづらいけど、この暗がりでもわかる。


その目は、宝石のように綺麗な色をしていた。



「っあの……」



口を開こうとして、手を繋いだままだったことを思い出して慌てて離した。

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