第40話
いろんな人のひそひそ話が、彼に聞こえているのだろうか。……いや、あたしが聞こえていたように、その子の耳にも届いているんだと思う。
何にも聞こえていないふりをしているのか。足元を見ながら歩を進めている。
そして、その子の少し前を歩く少し年上そうな男の子は、お兄さんだろうか。
にこやかな顔で、その更に前を行く父親らしき人について歩いていた。
あのお父さんは、周囲で交わされる会話が恐らく聞こえているだろうに、否定もしなければ彼を守ろうという姿勢さえ見せなかった。
どうしてだろう。
無意識の内に、春明さんや飾利さんと比較してしまう。
やっぱり、誰も彼もが春明さんや飾利さんのようにあたかかいわけではないのだと思った。
あたしはやっぱり恵まれている
守ってくれる人や、手をとってくれる人たちが、あたしはいる。
それだけで、あたしはこんなにも救われた。
あの子は……あの男の子は、誰か守ってくれる人が、いるのだろうか。
「……八神さん、ご無沙汰しております。この度はこのような祝いの席にお招きいただきありがとうございます」
「ああ、鷹月さんお久しぶりです。そんなかしこまらなくとも、私とあなたの仲ではないですか。もう少し楽にしてください」
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