第37話

十歳になった。去年の記憶を塗り替えるようにみんながたくさん祝ってくれた。




「小宵が生まれてきてくれて本当によかった」



幸せだ。


幸せすぎて、怖い。



「神様に感謝しなきゃ」



微笑む飾利さんの顔色は、あまりよくないもので。


咳込むと、そのまま数日部屋に籠って、病院での療養も増えていった。


入退院を繰り返している中、あたしたちはとあるパーティーに招待されたのだった。


それまであたしは、パーティーというものに参加したことがなかった。


いつも断っていたけど、これからどんどん機会が増えていくかもしれないから、と今日初めて訪れたのだ。


とはいえ、あたしの存在は公のものじゃない。隠しているわけじゃないけれど、あたしが自然に馴染めるようにと、無理に発表をしていないだけだ。


それでも、知っている人は知っていて、妙な噂をする人はたくさんいた。




「水波さん、お嬢さんなんていましたっけ?」


「養子って噂だけど」


「なんでも両親ともに褒められたものじゃないそうで……不倫の末、事故死ですって」


「奥さんの方も精神病で……」


「気の毒ですけど……それはちょっと」


「その話が本当なら、ここの敷居を跨いでよく平気でいられるわよね」


「八神さんはこのこと知っているのかしら」


「知っていたらここにはいられないはずでしょう」

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