第25話
春明さんの言葉を遮って、母はそこにやってきた。
薄くなった肩にストールを巻いて、長い髪を右に流している。
肌はいくらか血色はよくなっていたが、虚ろな目は相変わらずどこを見ているのか全くわからなかった。
「みんなで何をしてるの?その子のお祝い?」
「お姉さん、どうして……」
「どうして?それはあたしの台詞よ、飾利……どうしてその子を可愛がるの?その子は、あたしの愛する人も、あなたも、何もかも奪っていったのに」
テーブルまで近づいてきて、使用人から乱暴にナイフを取り上げる。
そして、あたしに向かってそれを振り下ろした瞬間、隣に座っていた伊吹が立ち上がった。
ガタッという椅子の音とともに、切っ先が眼前で止まる。
「何もかもめちゃくちゃよ」
「……」
「あんたが生まれたおかげで」
「飾利さん!落ち着いて……っ!」
「本当に最悪……」
刺されるのかな、もしかしたら、ここでお母さんに殺されちゃうのかな。
それならそれで、受け入れてしまっても……、
「小宵ちゃん!!!」
はっとする。名前を呼ばれて、自然と顔が上がった。飾利さんや、春明さん、伊吹の顔が視界に映った瞬間、「おかあ、さん」と。
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