第21話

けれど、多分、飾利さんたちはわかっていたのだろう。あたしがその学校でもあまりいい扱いを受けていないことを。


それもそうだった。母親は病で臥せって、父親は愛人と逃げて命までなくした。両親のいないあたしはそんな世界では腫物も同然だ。


だからもっときちんとしたところに通えば今よりマシになるだろう、と配慮した故の提案だった。



「……でも、あの、っ」


そんなに勝手に決めてもいいものなのだろうか。お金は?手続きは?


そもそもお母さんはなんと言っているのか。


いろんな考えが頭の中を巡って、言葉が詰まる。


焦っていると飾利さんはあたしの手をとって、優しく微笑んでくれた。



「何にも心配いらないわ。小宵ちゃんがただ判断すればいいだけなのよ」



あたしが判断する。そんなことを言われたのは初めてのことだったから、驚いた。



「小宵ちゃんがどうしたいか。あたしはね、あなたに無理をさせたいわけじゃないの。洸瞑が嫌なら断ってくれてもいいの。小宵ちゃんはどうしたい?」


「あたし……は……」



何がしたい、とか。あれがしたい、とか。


そんなこと考えたこともなかった。意思なんて、あっても無駄だと思っていたから。



「いき、たいです」



初めて自分で判断したそれは、あまりに小さな声だったけれど、飾利さんが優しい顔で「そう」と微笑んでくれたことは覚えている。

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