第15話

「取り繕って、人の顔色ばっか見て!いい子ぶって!!子供のくせに本当最悪、気持ち悪い!!」


「姉さんやめてっ!!!」


「あんたがかわりに、いなくなってくれればよかったのに!!!」



数少ない参列者がざわめき、その異常な光景にようやく動き出す。


母は押さえられ、あたしはその光景を無音の世界で眺めていた。飾利さんがあたしの両耳を手で塞いでくれていたからだ。


人形のように表情をぴくりとも動かさないあたしを抱き締めて「大丈夫、大丈夫だからね」って声をかけてくれる。



「大丈夫です、あたしは平気です」



頷きながら、淡々と答える。ぶたれた頬はじんじんと熱く、なんとなく痛いような気がしたけど、母の方が苦しそうだったことを思えば耐えられた。


飾利さんはあたしを見下ろし、今にも泣き出しそうな顔で「ごめんね」と謝った。


なんで、この人が謝るのだろう。


不思議になりながら、あたしは首を振った。


思えば、あたしは大分、おかしな子供だったのかもしれない。






その日から、あたしと母は飾利さんの家で過ごすことになった。けれど、母と顔を合わせるのは、一週間に一度。母の情緒が安定している時間だけだった。

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