第13話

春明さんの家に連れていかれて、母に会いたいと言ったあたしに「今日はもう遅いから、明日にしようか」と言われたことを覚えている。


今思えば、二人はあたしの扱いに困っていたように思う。



そして、次の日の朝。


飾利さんの家で、「なんで!!なんでなのよ!?!!」と叫び狂う母を見つけた時、あたしは状況が理解出来なくて暫く廊下で呆然としていた。



枕で叩かれながら「落ち着いて、灯利あかりさん!」と春明さんが母の名前を呼んでいた。


羽毛が飛び散る。飾利さんは口を押えながら「ね、姉さん…っ」と今にも崩れそうな顔をしていた。



「なんで、なんであんな女と死んじゃったのよぉ……っ」



顔を両手で覆って泣き崩れるその人を、あたしはまるで遠い景色でも眺めるように見つめていた。


どういうことかわからなくて、「し、んじゃった?」と口を開くと、飾利さんと春明さんがはっとしたように廊下に立っているあたしの存在に気が付いた。


青ざめながら「こ、よいちゃん、起きてたの?ごめんね、あっち行こうか」と取り繕うようにあたしの手を引く飾利さん。


春明さんは母の暴走を止めようと、かかりきりになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る