第12話
その日は慌ただしかった。いつもは昼頃までぼーっとしている母も電話をとって、急いで玄関から出て行って、あたしはいつものように置いてけぼりだった。
いつものことだ。慣れたように家で待っていた。けれど深夜になっても母は帰ってこなかった。
さすがに不安になって、部屋の隅で枕を抱いて待っていたら、玄関が開いた。
誕生日の時のように、そこにいたのは母ではなく春明さんと、それから飾利さんがいた。
「小宵ちゃんっ、ごめんね!心細かったでしょう?」
部屋の隅にいたあたしを抱き締めながら飾利さんは告げた。こんなに真っ暗な時間に二人が来たことは今までになかったから驚きながらあたしは首を振った。
「こよいはだいじょうぶ、です。それよりお母さん、だいじょうぶかな。朝、すごくへんだったんです」
「……」
「……」
二人は何も答えなかった。代わりに顔を合わせて、「一緒にお家にいこっか」と声を掛けてくれた。「でも、お母さんが」と言えば「大丈夫」と飾利さんは続けた。
「姉さん、うちにいるから。だから、ね?一緒に行こ」
頷いたあたしにほっとしつつも二人とも浮かない顔をしていた。
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