第11話
綺麗な空間に、豪華な食事。
戸惑うあたしを取り囲む、優しい人たち。
「ばっぴばーすでーとぅーゆー」と口遊む飾利さんと、あたしと伊吹。
人目も憚らず春明さんはカメラを構えていた。
そわそわしてしまう。こんなに人たちに囲まれても、自分はいいものなのだろうか。
そう、疑わずにいられない。
同時に、ここは自分の居場所ではないような気がしてならなかった。
だってあたしは、この人たちの家族じゃないから。
不意に、お母さんもお父さんも今頃、楽しく過ごしているのかなって頭で考えた。
こよいがいなくても楽しいのかな。
楽しい、んだろうなって。
でも楽しいのなら、笑顔なら、それでいい。
自分がそこにいなくても、二人が幸せなら、それで。
「今日は姉さんいないけど、でも姉さんも、小宵ちゃんのこと大好きだからね」
飾利さんが言う。その言葉だけで十分。あんまり望んだら、罰が当たる。
「うん!」と頷いて、ケーキをフォークで掬った。
あたしは十分、幸せなんだからと、
言い聞かせて。
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