第9話

にっこり笑って後ろで組んだ手をぎゅっと握る。


そんなあたしに「それじゃあ、戸締りだけは気を付けてね」と母は家から出て行った。


部屋の中で一人ぼっちになった瞬間、母がどんな気分で窓の外を眺めていたのかわかる気がして、ちょっとだけ涙が滲みそうになった。


でもそれを我慢して、あたしはすぐに身支度をする。


いつ春明さんが迎えに来てもいいように。心配をされないようにしなくては……だって、あたしはお母さんたちと離ればなれで暮らしたいわけじゃない。



幸せだって顔をしておけば、


きっとまだ……まだ、


一緒にいられる。






「小宵ちゃんっ」



迎えに来てくれた春明さんは少し焦った様子だった。あたしが泣いてると思ったのかな。



「おじさん、こんばんは」



玄関の前で出かける準備をして待っていたあたしに、春明さんは少し悲しそうな顔をして「うん、こんばんは」って微笑みかけてくれる。


どうしておじさんの方が泣きそうなんだろう。あたしは平気なのに。


そんなことを思いながら手を引かれる。


長い車の中には伊吹がいてあたしが「こんばんは」と頭を下げれば、「こんばんは」と返してくれた。

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