第5話

飾利さんは花のことになると、いつも以上にお喋りになる人であたしはいつもその話を熱心に聞いていた。


伊吹は聞き飽きたとばかりに、庭にある椅子の上でこちらの様子を眺めている。




「あ、それからこれは……クレオメって言うんだけど、蝶々が止まってるようでとっても可愛いでしょ?でも第一印象はそんなにいいものじゃなくて、蜘蛛みたいって言われてたの。花言葉はね、秘密のひととき。あなたの容姿に酔う、それから」




飾利さんは可愛らしく口を動かして、



「小さな愛」


と、あたしの目線に合わせてしゃがみ込んだ。



やっぱり綺麗に笑う人だ。目元が伊吹やお母さんに似ている。


それから、暫く花を眺めていたら虫の羽音が聞こえた。「あ、はちだ」と口を先に開いたのは伊吹だった。







「き、きゃー!蜂ぃー!?!?」


花が好きな飾利さんは虫が苦手で誰よりも先に叫び声を上げて、よろりと狼狽えていた。


その声に反応したのか、蜂が飾利さんに向かって飛んでいく。


慌ててその身体を庇う様に駆け寄れば、急に方向転換した蜂があたしの腕をぶっすりと刺した。

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