第4話

その子があたしを見て、首を傾げていた。


あたしが「だいじょうぶだよ」って答えると、彼は「そっか」とすぐに顔を背けた。


あまり口数が多いわけじゃないけど、その子、伊吹は優しくて思い返せばすごく気の回る男の子だった。






「見て見て!今度小宵ちゃんが来たら、このお花!見せたいと思ってたんだー!」


広い庭に咲く花を紹介するように飾利さんはにこにこと笑って「じゃじゃーん」と、両掌をひらひらと揺らす。


お母さんと比べて、無邪気に笑う人だと思った。


あたしのお母さんは、こんな風に笑わない。こんな風に、飾らずに自然体でいるような人じゃない。どちらかと言えば、とても周りの目を気にしているような人だった。




「これはねムクゲって言って、夏から秋にかけて咲くんだけど……花言葉は信念だったり、新しい美だったり……あ、でも英語だと恋のとりこっていう素敵な花言葉もあるの!いいわよね~。あ、あの木!ほら!ピンク花が見えるでしょ?あれはねー百日紅サルスベリって言うんだけど、小宵ちゃん初めて見たでしょ?花言葉は雄弁や愛敬!それからね、こっち来て!これはね……」

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