第3話
あたしの家とは大違い。だけど、お家が悪いと思ったことは一度もなかった。
だって、あたしはお父さんもお母さんも大好きだったから。
「……あ、きてたの?」
寝惚け眼を擦りながら、その子が言う。あたしは「こんにちは、いぶきくん」と笑顔で挨拶をした。
「こんにちは。……かあさん、おこしてよ」
「ごめん、だってさっき寝たばかりだったでしょう?それに小宵ちゃん、お母さんに会いに来てくれたんだって」
「ね?」と少し意地悪な顔でクスクスと笑う。そんな仕草が可愛らしくて、けれど綺麗で、幼いながらこんな人になりたいなぁとぼんやり思った。
「なにそれ」
「今から小宵ちゃんとお庭で遊ぶけど、伊吹も来る?」
「……うん」
むっとしつつも頷いた息子の手をその人は掴んで、空いた手であたしの手も繋ぐ。
わ、とその姿を見上げると、「どうかしたの?」と飾利さんが首を傾げる。
あたしは「ううん」と首を振って、そのあたたかな手を小さな手で握り直した。
こんな風に人に手を握ってもらったの、久しぶりだなぁ。あったかいなぁ。
なんて考えてしまう。家だと腕を持たれるから……。
「だいじょうぶ?」
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