第87話

顔を上げると、少し困惑したように唇を噛むコノエくんと目が合った。




「こ、」




コノエ、くん…?



どうしたと、いうのだろうか。



言葉が続かないあたしに、彼は「なんか、」と小さく口を開いた。




「へん……」



「え…?」



「どうして、俺は、こんな簡単に、アンタに触れて…」




まるで自分にぶつけるような。


疑問の入り混じった独白を吐き、コノエくんは自分の手を見つめる。



その視線を追い、あたしの腕を掴むコノエくんの手を見る。





「やっぱ、女っぽくないからかな……」



「………、え!」



い、いま、さりげなく、あの、



「貶し…?」



が、入ったような。



首を傾げるあたしを無視して、コノエくんは「いつもなら、」とそれをさらに続けた。




「ぞわぞわするし、全力でキモイし、心の底から触ってほしくないって、拒絶したくなるのに…、なんでかな、」

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