第86話

コノエくんの動きが止まる。


数秒後、ハッとしたように彼は目線を下げ、「あ、いやっ、」と口元を押さえた。




「違う…!だって!あんた、何言っても起きなかったから…!」



「?」



「だっ、だから!焦ってた、つか、間違えたっつか…!とにかく違う!!」



「え、でも呼んでくれたんですよね?」



コノエくんの方に身を乗り出せば、彼は「だから、ちがっ」と咄嗟に身を引く。


そして、今度はコノエくんが高さのあるマットから落ちそうになったので、


「危ないっ!」とその腕を掴んだ。





「大丈夫ですか…!?」



「っ、」



「後ろ、跳び箱がありますけど…、落ちたら痛いですよ…?」



続けるあたしに、コノエくんはあたしに掴まれた腕を見て固まっている。




「なん、で…、」



「はい…?」



「なんでアンタは、簡単に俺に触れるの…?」



「え…、あ、ごめんなさい!つい…!嫌ならすぐに…、」



「!、違っ…!」



手を離そうとしたら、今度はあたしの手首がコノエくんに掴まれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る