第85話

「ごめん、なさい……」



「は…?」



「あたしのせいで、ごめんなさい、コノエくんに迷惑を…、」



一刻も早く外に出たいはずなのに。


あたしのせいで、ここに閉じ込められてしまって、




「………いいよ、そんなこといまさら言われても」



「でもっ、」



「それに、アンタはさっき俺を助けてくれたし、……おあいこ」



「え…?」



「さっき俺が棚にぶつかった時、かばってくれたじゃん」



「あ……、」



「え、まさかもう忘れてたの?あーほんっとボケてるよね?つかさっきもそこから落ちた時、どんだけ鈍臭いのかと思ったし。マジありえない」




顔を逸らしながら、コノエくんはぶつぶつと文句を垂れている。



不機嫌そうに歪んだその横顔を見ながら、あたしは、ぼんやりした様子で口を開いた。





「あの、コノエくん」



開いた窓から少しだけ風が入ってくる。





「は、…なんだよ?」



「さっき、あたしのこと、」



埃っぽい空気が、少しだけ柔らかくなる。




「こよい、って呼びませんでしたか…?」

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