第81話

「ぅわぁっ!?」



手が滑って〝また〟落ちてしまいそうになったから、



「あ、ぶな…!」



反対側の腕を思いっきり取られてしまった。



ぐい、とマット側に引き戻されて、あたしは落ちそうになってしまった驚きと、




「また落ちる気かよ!おっまえ!どんだけ鈍臭いんだよ!ふざけんじゃねェよ!!」



「へ…ぁ、…す、みませ…」



「なーにがこう見えて運動神経良い方だと思うしだよ!こっちは本気でびっくりしたんだからな!こんな場所で気失ったヤツと一緒だなんて、考えただけでも………、なに?」



コノエくんの力が思いの外強かった驚きで、うまく言葉が出なかった。



細くて、華奢な方だから、力だってそんなにないものだと思っていた。



すっかり固まってしまっているあたしに、コノエくんは今度は怪訝そうに眉根を寄せる。



「なに!」



「え!?あ、ごめんなさい!なんでもないんです…っ!!」



咄嗟にそう言い、頭を下げればコノエくんは「なんだよその反応、」とさらに怪しむように口を開き、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る