第77話

「伊吹と全然違うし、意味分かんない、ブス…」



「全くコノエくんは。いつもあたしのこと、ブスだとかアンタだとかお前だとか…!どうして、そう言葉遣いが悪いんですか…?」



向こう側のマットに飛び移って、そのまま棚に足をかける。



「いいですかぁー、あたしにはきちんとした名前があるんですよ?水波小宵っていう可愛くて美しいちゃんとした名前が!」



「(か、可愛くて美しい…?)」



「なのに、ここに来てからはやれオサゲだとかやれブスだとかやれアンタだとかオマエだとか!ホント、最近になってようやく冬馬さんとリュウくんが、…よっ!」



ふん、と手を伸ばして、あたしは窓の鉄格子を必死に掴む。


そしてそのまま棚に足を乗せ、身体を思いっきり窓の方へと寄せた。



片足は宙に浮いたままだけれど、窓との距離はかなり近くなった。


片手でどうにか鍵を開け、恐らく数十年は開いてなかっただろう窓を、無理矢理こじ開ける。

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