第76話

「やめた方がいいって…!」



「大丈夫大丈夫」



と、跳び箱の上に乗りながら振り返る。




「あたし、こう見えて運動神経良い方だと思うし、」



「んなこと聞いてねーよ!!」



「あ、コノエくん。パンツ見ないでくださいね?」



「っな!?、そんなもん見たくねーし暗くて見えねーよ!!」



「あはは、冗談ですよ」



必死に言うコノエくんについつい笑ってしまう。


あたしは跳び箱の上から手を伸ばし、その顰めっ面にかかる前髪を指の甲でそっと撫でた。




「っ、」



「すぐに光の下に出してあげます。だからそんな泣きそうな顔しないで」



本当はもっと触れてあげたいけれど、コノエくんはきっとあたしが…、というよりも女の人に触られるのは好きじゃないと思う。


小さく口角を上げれば、コノエくんは文句を言いたげに口を開いたけれど、言葉が見つからなかったらしく、「……何様なのアンタ」と、そのまま小さく俯いた。

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