第69話

ほぼほぼ真っ暗なそこ。


窓は一つだけ天井近くにあるけれど、小窓な上、鉄格子も付き、埃かぶっているので光と言える光は入ってきていない。


きっと、日当たりも悪いのだろう。



そんなわけで、本当に暗いそこでは相手の顔の表情をきちんと認識するには時間がかかった。


目が慣れてきて、ようやくコノエくんの顔がしっかりと見えてくる。


声色と同じく、焦燥感を秘めたその横顔は、泣きそうで、かつ不安に押しつぶされそうな表情をしていて、あたしは頭の中には更に『?』が飛び交った。





「コノエくん…?」



「まだいんだよ!開けろよ!開けろって!!……っ、あけろ、」



「どうしたの?大丈夫?」



「っ、触んな!!」



触れようと伸ばした手を思いっきり振り払われて、あたしは「コノエくん?」と今一度その名前を呼んだ。



「気持ち悪い…、ほんと、」



扉に拳を置いたまま、項垂れるようにしてその場にしゃがみ込むコノエくん。



少しだけ、語調が弱まり、息遣いが荒くなる。

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