第68話

外にいるのは、「ふんふんふーん」と、耳にイヤフォンをしながら、気分よさげに鼻歌を歌っている男の子が一人。



恐らく、こちらに気づかないで体育倉庫を閉めてしまったらしい。



けれども、そんなことが中にいるあたしとコノエくんにわかるはずもなく。




「おいっ、おいって!!」



バンバンバン!と扉を拳で叩くコノエくん。


それを見つめながら、「もしかして、鍵かけられちゃったのかな…」と、呑気に言うけれど、




「まだ中にいんだろ!!おいっ!!」



コノエくんがあまりにも必死にそれを叫んでいるから、あたしもとりあえず扉を叩いた。



コンコンコン、と言った感じにだけれど。




「あのー、まだいるんですけどー」



「開けろよっ!!」



対照的な温度差で、あたし達は外に向かって声をかける。




「ダメだなぁ…」



「おいっ、誰か、誰か!!」



早々と諦めたあたしとは引き換え、コノエくんはガンガンとそれを叩いている。


その焦ったような声色に、あたしはやはり首を傾げてしまう。

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