第51話

顔を覆って泣いていたあたしに、そう近づいたミクさん。


きっと気を抜いていたに違いない。





「……、なーんてね」



「っ、な!」



「捕まえちゃった」





ふふ、と口元に笑みを添えて、そう可愛らしく言えば、ミクさんの顔は真っ青に染まる。


咄嗟に身を引こうとするので、掴んだ腕を引き、あたしはその首に腕を絡めた。




「ミクさん、すぐ逃げようとする。やめてくださいよ、あたしが悪いみたいじゃないですか」



「っ悪いだろうが!つか離せ!マジで殴るぞ!」



「えー、別にいいですよ?」




その首から後頭部に手を添え、あたしはその不機嫌そうに歪められた綺麗な猫目を見つめる。


柔らかなミクさんの金髪があたしの指の隙間に入り込み、ふわふわと皮膚を撫でていく。




「一発くらい殴られたところで、あたしはきっと、負けませんし」



「っ、てめ、」



「あ。でも待ってミクさん」



「あ…?」



「殴る前に、口、閉じて下さい」

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