第16話

「ナツキだよぉ!ナツキ!」



「な、つき…ちゃん?」



「そぉーだよぉ!忘れちゃったのぉ?」



「え…?ああ!なつき、ちゃん、ね!アッハハ、忘れてないない!」




「(嘘だな)」



「(嘘だ)」



「(嘘ですね)」




トラくん、伊吹、あたしの心の中が見事シンクロする。






「ひどぉーい!ナツキ!激怒ぷんぷん丸だぞ!」



「アッハハハ、なにそれ~。かわいいね」



「………」



今、何故か一瞬、ゴンさんやテルさんたちを思い出した。



冷めた目つきでこちらを見ている伊吹は「早急に帰りたいんですが」と、トラくんに向かって本気で訴えている。



「俺も帰りたい。帰りたいけど少しの辛抱だよ」とか言って、なにやらトラくんも踏ん張っている模様。



ナツキさんは、頭の上で作っていた拳を解きながら、不意にあたしの方を見る。


そして、ピンク色の綺麗な唇でアーチを描き、「ああ、」と。




「小野町クン、女の子と遊びまわってるって噂、やっぱりホントーだったんだぁ」

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