第76話

優は美嘉のアゴを指でくいっと動かし、

二人の唇は重なり合う。



波の音と潮の香りが、二人を始まったあの日へと引き戻そうとしているようだ。



風が吹くたびに優の髪が美嘉の頬へとあたり、

くすぐったいような…でも優が近くにいてくれてるという安心感を与えてくれる。




さっき見た星空があまりにキレイすぎて、

目を閉じていても鮮明によみがえって来る。




重ね合った唇をゆっくりと離し二人の吐息が一緒になった時、

美嘉は優の体を強く押し倒した。



「美嘉?どうしたん…」



優の言葉を遮り、

美嘉は優の上に乗ったまま再びキスをする。




なぜかとても不安で…

なぜかとても愛を感じたくて…

なぜかとても一つになりたいの。



言葉なんかいらない、

ただ思いのままに行動する。



始めて来た遠い地が、

美嘉を大胆にさせてくれたのだろうか…




いや、違う。


一つになりたい。


優と今一つになりたい。


ただそれだけ。



ゆっくり唇を離し、

横になった優にしがみついた。





「優・・・・・」

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