第56話
その時、
ひやっとしたものが体全体を覆う。
…浮輪だ。
このハイビスカス柄の浮輪は、
確か優が買ってくれたやつだ。
後ろを振り向けば、
ニカッと笑っている優。
「浮輪膨らましとった。遅くなってごめんな!」
美嘉は浮輪でぷかぷか浮きながら、
唇を尖らせて答えた。
「別にぃ~!!」
バカ。
本当は寂しかったくせに素直になれっ!!
…と心で自分を応援する
優は浮輪に掴まり、
一緒になってぷかぷかと浮いた。
「寂しかったん?」
「寂しくないよっ!!」
バタアシをして、
優に勢いよく水をかける
「寂しかったからいじけとるんやろ?素直にならなこうするで!」
浮輪をくるくると回し始める優。
「ギャ!!目回るっ!!許してぇ~!!」
いつの間にか足がつかないくらい深い所まで来てしまっていた。
優は美嘉と同じ目線の高さまで体を下ろし、
浮輪を回す手を止め軽く抱きしめた。
「寂しかったやろ?」
優のひんやりとした肌が気持ちいい。
「…めちゃめちゃ寂しかったよっ!!」
優から目をそらし、
少し怒ったように答えた
やっと…
素直に言えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます