第25話

優が今まで抱えてきた辛さに気付いてあげられなかった自分の不甲斐なさと…


優が負った傷の深さを考えると、

涙が溢れ出た。




その涙は頬を伝わり、

優のほっぺにポツンと落ちる。




急いで涙を拭いたが、

優はほっぺに落ちた美嘉の涙に気が付き、

横になったまま美嘉のまぶたに指をなぞった。




「泣いとるん…?」



「泣いてないよ…」



泣いてるよ!!

優のせいだよ。


辛さを隠してるくせに…

相談してくれないのが悲しいの。



優は体を起こし、

ほっぺをつねった。




「泣いとるやん。

美嘉の強がり」




強がり…

それ自分じゃん。




「どっちがだよぉ…」



美嘉は優に抱き付き、

優の体をポカポカと叩いた。




「優の…優のバカァ!!バカバカバカバカ」



何も気付かなかった自分へのいらだちや、

何も話してくれなかった優への怒り。



優が背負った傷の悲しみや、

優が美嘉のそばにいてくれてる安心感。




いろんな気持ちが混ざり合い、

複雑な涙だった。




優は何も聞かず、

ただずっと泣いている美嘉をやさしく抱き寄せ、涙を拭いてくれた。

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