復讐3

「……ふぅー」

 そんな中で、僕は深々と息を吐く。

 巨大な穴を落ちていく僕の直感は今、これまで感じたことのないような警鐘を鳴らしていた。

 間違いない。

 このまま進んでいけば、自分が死んでしまう。

 そんな感覚がずっと、僕の中を支配していた。

「ふふっ」

 ただ、それでも僕は一切臆することなく笑う。

「あー」

 実にドラマチックだ。

 明日の飯さえも覚束ない日々を送っていたスラムの人間が、一人の少女と出会った人生が一変したのだ。

 人の温かさも、優しさも、愛情も、何もかもを知らなかった。

 何の希望もなく、何の喜びもなく、ただ生きるだけだった毎日。

 そんな、空っぽだった僕は自分の人生の中で、生きていて良かったと思えるような大切なものを見つけられたのだ。

「傑作だな、僕の人生」

 それなのに、後悔などあろうはずもない。

 ただ、最後にやっぱりおっぱいは揉んでみたかったなぁ。

 ……。

 …………。

 そろそろ、穴の底が近づいてくる。

 僕は自身の指を鳴らし、それと共に己の手に雷が走り、それが在り方を変えて一振りの刀となる。

「……暗いな」

 未だに空は僕の陰陽術が作りだした黒い分厚い雲に覆われ、闇が現出されている。

「あぁ……」

 今夜の夜空はたった一つの星も隠してしまった。

「ここからは俺の、俺だけの時間だ」

 なればこそ、暗闇で俺は輝けるのだ。

 刀を持った僕は穴の底へと足をつける。

「あ、貴方……っ!星歌の隣にいたっ、スラムの餓鬼がっ!この私に何かして、許され───」

 そこで僕を待っていたのは星歌の姉妹の一人である明菜だ。

 自分の顔を見るなり騒ぎ始めた明菜。

「うるせぇよ、俺の前で囀るな」

 その首を、俺はたった一刀で跳ね飛ばす。

「結局、お前のことは理解できんよ、壱」

 壱が仕えていた女があっけなく崩れ落ちていく様を見ながら、俺は自分へと迫りくる何かへの警戒心を強めていくのだった。

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