しかけえほん『カラダをあらいましょう』
加賀倉 創作【書く精】
いち『テをあらいましょう』
【注意其の壱】本作はフィクションです。それっぽい仕上がりを目指しましたが、登場人物は全て架空の人物です。
【注意其の弐】本作には、残酷・グロテスクな描写が伴います。特に、三部作の三部目にご注意くださいませ。
——遠い昔、遥か彼方の
アヌス・アラエヤカス。
彼はローマ
当時、ローマでは謎の疫病が
「全ての
アラエヤカスの声が、城下に響いた。
二回手洗。
毎日入浴。
土足厳禁。
ローマの
しかし、反抗者がいた。
というのは……
子供たちだ。
そして五歳の
*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*ωΔҕħ!*
ある日の夕飯前、
「ふん! そのようなわず
ギタナイウスは、生意気を言う。
「
困ったアラエヤカス。
「せぬわ! それよりもだ、アラエヤカス。しんさくの
それを聞いたアラエヤカスは、
「では
「アラエヤカス、それはま
「はい。こちらでございます」
アラエヤカスは、やけに分厚い一冊を、ギタナイウスに両手で手渡す。
ギタナイウスは、絵本を、ミシミシと言わせながら、開く。
「なんじゃ、これは?」
絵本からは硬質の厚紙が、ばっと飛び出している。見開き一ページの真ん中には大きく、一人の女の子の上半身の立体像。女の子は、洗面台の上に両手を伸ばし、手のひらを合わせている。
そして、女の子の隣には、こんな文章が添えられている。
・〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・
みぎのおててと ひだりのおててを
ごしごし ごしごし
ゲルマンじんや ペルシャじんには
ナイショだよ?
・〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・
ギタナイウスは少々困惑しつつも、初めて目にした珍しい作りの絵本にあれこれ触れ、興味を示してはいる様子。
「それは仕掛け絵本、というものです。この女の子、まるで絵本の世界からこちら側に飛び出してきたみたいだとは思いませんか? それと、面白いのはここからですよ。
アラエヤカスは、ギタナイウスの小さな手に己の手を重ねて、ツマミの方へ誘導する。
「ほぉ、こうか?」
引っ張る。
引っ張ったツマミの動きに連動して、女の子が手を擦り合わせる。
ギタナイウスは、顔をぱあっと明るくする。
「そうです。次は、そのままツマミを押し込んで、元に戻してみてください」
アラエヤカスは、自慢げに、さらなる
「わかった、やってみよう」
引っ込める。
引っ込んだツマミの動きに連動して、女の子がさっきとは逆方向に、手を擦り合わせる。
ギタナイウスは、にっこりである。
「どうですか、
「うむ。アラエヤカスよ、なかなかやるではないか。ほうびをくれてやろ…………いやまて、このえほんのだいめいは、なんというのだ?」
「『カラダをあらいましょう』
「
アラエヤカスの意図に気づいたギタナイウスは、カンカンに怒った。
「偶然ですよ、
どさっ。
アラエヤカスが提案を最後まで言い切るよりも早く、仕掛け絵本が、床に叩きつけられた。
おまけに、衝撃で仕掛けが壊れて、女の子の両腕が、ポロリと取れた。
ギタナイウスが、投げ捨てたのだ。
「ああ、私の新作が!!」
アラエヤカスは、無惨に壊れた仕掛け絵本の方へ駆け寄り、しゃがみ込む。
「ふん! こざかしいまねをしようとするからだ。アラエヤカス、ここはしんせいなるわれのおもちゃべや。しっかりとかたづけておくのだぞ?」
ギタナイウスはそう言い放つと、アラエヤカスを残して、
「いいものができたと思ったのだが……
その日の夕飯時、
アラエヤカスは、
次の日になっても、一週間経っても、一月、一季、一年経っても、アラエヤカスは帰ってこなかった。
〈子〉
〈に『アタマをあらいましょう』に続く〉
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