第2話 交換殺人と一人二役
ミステリーや、推理小説と呼ばれているものは、日本に入ってきた時には、
「探偵小説」
と言われていた。
この探偵小説というのは、元祖として、
「シャーロックホームズ」
のような探偵であるというのは、当たり前のことであるが、逆に、
「怪盗が主人公」
というものがあり、それが、有名な、
「怪盗ルパンシリーズ」
である。
こんなそれぞれ対照的な主人公が、
「探偵小説の魁」
などと言われると、前述にある、
「減算法と加算法」
というような考え方になるといってもいいだろう。
前述の
「囲碁と将棋」
というたとえのように、二つの両極端なものが、
「いかに抑止力として働いているか?」
ということを考えると、実に、
「おかしなバランス」
といってもいいだろう。
しかし、やはり探偵小説といえば、今でも世界的に大人気で、
「シャーロキアン」
と呼ばれる、
「シャーロックホームズのファン」
と呼ばれる人もいるに違いない。
探偵小説における、
「トリックというものは、探偵小説とは、切っても切り離せない」
というものであるということである。
実際に、シャーロックホームズの本を、どこまで読んでいるかということにもよるが、その後、日本に渡ってきてから、黎明期から育まれてきた、
「トリック」
というものは、時間が進むにつれて、次第にたくさん出てくるようになり、実際に、いくつかのパターンに集約されるようになり、
「すでに、黎明状態において、出尽くされた」
といってもいいのではないだろうか?
実際に、その頃には、
「探偵小説についての評論などというものも結構あり、海外では、
「タブーとされるもの」
ということで、
「ノックスの十戒」
などと言われるものや、
「バンダインの二十則」
と呼ばれるのがあり、それが、
「探偵小説における、タブーの列挙」
といってもいいだろう。
そんな探偵小説における、
「戒律のようなもの」
というものが存在する時点で、
「トリックというものが出尽くした」
といっても過言ではないだろう。
探偵小説というものが、どのような時代背景によるものなのかということを考えると「本場イギリスと日本とでは、差がありすぎる」
ということであったり、密室殺人などでは、
「日本家屋では、密室トリックは難しい」
と言われていたが、それに特化したものもある。
そもそも密室トリックというのは、基本的には、
「針と糸などの機械トリックで、いかに、大げさにまとめ上げるか?」
ということが問題なのだ。
そんな中で、
「密室トリックという考え方」
というものは、
「他のトリックと併用して使う」
といってもいいだろう。
例えば、アリバイトリックのような形で、
「そこが密室になったことで、誰かのアリバイが成立した」
と考えた時、その人が、本当に犯人であれば、
「密室が成立したこと自体が矛盾であり、そうなると、誰か登場人物の誰かを、抹殺するということも、ありえないわけではない」
ということになるだろう。
つまりは、
「密室トリック」
というのは、
「入らなければ、出られない」
という個室というところの本質を考えれば分かることである。
だから、ここで、一人の人間を抹殺するだけではなく、抹殺したことで、辻褄が合わなくなった分、誰かをその話中に、登場させるということであり、
「ただ、殺されるだけのためのキャラクター」
という存在だってありえることである。
それを考えると、
「密室トリック」
というものは、針と糸の機械トリックを使うとしても、
「プラスになる人物」
と、
「マイナスになる人物」
というものの狭間で、
「プラスマイナス0」
というものになる。
この発想は、数学的な発想というよりも、算数的な発想といってもいいだろうが、算数というのは、考え方によれば、数学よりも難しい。
小学生の頃にあった、
「算数の文章題」
というものは、基本的には、
「答えが合っている」
ということが前提であり、
「答えを求める間が重要であり、辻褄が合っていなければ、答えが合っていたとしても、まぐれである」
と言われてもいいだろう。
しかし、逆にいえば、
「答えが合っていれば、途中でどんな解き方をしても、それは正解だ」
ということになる。
もっといえば、
「答えを導く間のプロセスも、回答の一つだ」
ということになれば、
「回答というは、決して一つではない」
ということであり、それが、
「数学ではない、算数というものの、醍醐味だ」
といってもいいだろう。
それを考えると、小学生の頃だったか、理科で習った。
「見かけの光合成」
というものを思い出した。
見えている部分と見えない部分が交錯し、表で見えているものを、見かけということで、「プラスマイナス0」
という発想になってくるのだった。
見かけの光合成は、人間と植物の呼吸。つまりは、
「呼吸における違うもの」
という意識であった。
そんな密室トリックで、いくつか気になる小説もあったのだが、たとえば、
「水が流しっぱなしにしている浴室で、身体だけを持ち去った、バラバラ殺人が起こった。身体がないということは、手と足と首だけがそこに置かれていた」
というような話であった、
そして、その浴室が、密室になっていて、要するに、
「死体損壊トリック」
というものと、
「密室トリック」
の合わせ技という感じである。
ただ、一般的な、
「死体損壊トリック」
というものは、本来なら、
「身元を隠す」
という意味で、
「首や、特徴のある部分、さらに指紋を隠す」
という形のものなので、指紋も首もあるので、普通の、
「死体損壊トリック」
というものではないといえるだろう。
だから、犯人にとって、顔や指紋が存在するということは、別に問題なく、問題なのは、「それによって、時間稼ぎができたことでの、
「アリバイトリック」
というものが存在したということである。
これは実は、水が流しっぱなしになっているということも理由の一つであった。水を流しっぱなしにしているということは、実は2つの意味があり、一つは、前述のアリバイトリックのためだったということである、
つまり、そこから言えることとして、
「殺人現場はここではない」
ということを、知られては困るというのが、犯人の目的だった。
だから、わざわざ重たい胴体だけを持ち去ったわけではなく、実際には、他で殺害しておいて切断した、手足と首を持ち込んだだけなのだ。
なぜ水を流したのかというと、
「ここが殺害現場であれば、あまりにも血の量が少ないことでバレてしまうからだった。
つぃまり、切断の理由と、密室にした理由は、すべては、アリバイトリックを完成させるためのものだったのだ。
そして、水を流したもう一つの理由として、
「水を流すことで、密室を作るための、機械トリックを完成させるということが目的だった」
ということである。
そんな、
「密室トリック」
というのは、そういう意味では、いろいろなトリックとの、
「合わせ技」
であったりすることで、完成させられる一種の、
「完全犯罪」
というものを作り上げるということもできるのかも知れないということで、実際に、
「完全犯罪」
というものを目指したのかも知れない。
そもそも、犯罪における、
「トリック」
というものであったり、
「犯罪のシチュエーション」
であったり、
「犯罪の種類」
というものでは、あり得るものとして、
「探偵小説黎明期」
と呼ばれる時には存在したが。その種類は、
「すでに、ほとんどが、出尽くしている」
といっている人がいたようだ。
「だから、あとは、シチュエーションなどによるバリエーションだ」
といっているようで、前述の、密室トリックと、アリバイトリックの合わせ技などということがありえるのだった。
「なぜ、黎明期にトリックなるものが、出尽くしたのか?」
ということになると、いえることとして、一つは、
「時代が進むにつれて、化学が発展し、主要であるトリックが使えなくなる」
というのが一番大きいであろう。
というのは、
「半分以上のトリックが、使えなくなるからだ」
ということになるのだが、それを順を追って考えていくことにしよう。
まずは、一つ目として、前述の、
「死体損壊トリック」
と言われるものである。
これは、当時としては、
「顔のないトリック」
ということで、いわゆる、
「首なし死体」
であったり、
「顔をめちゃめちゃに崩されている殺人」
というものだったりする。
顔が判別不可能にしたり、手首を切り取るのは、そういう意味で、
「身バレしないようにするため」
ということであろう。
さらに、このトリックとして、
「死体を、どこかに隠すことで、死体発見を遅らせるという目的の下であれば、これも、死体損壊トリックというのと同じ効果があるだろう」
ということであるが、
これは、死体発見を遅らせると同時に、ある意味、
「アリバイトリック」
には、不向きな場合がある。
なぜなら、
「死体の損壊が激しいということは、自然に腐敗していくものなので、それだけ時間が経っているということであるから、当時の科学力では、死亡推定時刻というものが曖昧になる」
ということで、その分、
「せっかくアリバイを作っても、それだけ、死亡推定時刻が曖昧になってしまうと、アリバイがアリバイではなくなってしまう」
ということになるだろう。
そういう意味で、
「アリバイトリックを、死体損壊トリックと絡める場合には、注意というものが、必要になる」
ということが言えるのではないだろうか。
だから、トリックが重なるというのは、ある意味、いいことでもあるが、一歩間違えれば、相手を上書きしてしまうことで、うまくいかないということを示しているのではないだろうか?
そういう意味で、
「犯罪とリックの、重複というのは、まるで、もろ刃の剣だといえるのではないだろうか?」
ともいえるだろう。
さらに、この死体損壊トリックというのは、
「最初に、これが死体損壊だということを、分からせる必要がある」
ということであり、その変わり、この手の犯罪の法則ともいえる、
「加害者と被害者が入れ替わっているのではないか?」
ということや、
「他の犯罪との抱き合わせ」
ということを示さないようにしないといけない。
ということで、この事件が、最後まで、
「裏に隠れたトリックというものを分からせないようにしないといけない」
ということも、このトリックにおける、
「鉄則」
ということになるであろう。
「密室トリック」
であったり、
「死体損壊トリック」
などというのは、
「最初から現象が見えているもの」
ということであるが、逆に、
「トリックがどういうものなのか分かってしまうと、その時点で、あらかた、事件の山が見えてくる」
というのが、
「一人二役トリック」
であったり、
「アリバイトリック」
などがそうであろう。
しかもそのものは、
「元々表に出ている犯罪の裏であったりするから見えていない」
といってもいいかも知れない。
他の犯罪と併用することで、隠れているのだが、実際には、表に出てはいけないだけで、ストーリーの中で、伏線のような形でうごめいているというものが、この種類のトリックなのかも知れない。
さて、そんなトリックとは別に、トリックとしての分類ではないが、
「犯罪の種類」
に分類されるものなのであろうが、
「その特殊性」
というものから、トリックとしては、語られないものが、
「交換殺人」
と呼ばれるものである。
この交換殺人というものは、その特殊性から、
「探偵小説などではあり得るかも知れないが、実際の犯罪としては、存在しない種類のものではないか?」
と言われるものであった。
この交換殺人というのは、
「成功すれば、完全犯罪」
と呼ばれるもので、なぜ、総いわれるのかというと、この事件の一番のメリットは、
「一番怪しいと思われる人間には、完璧なアリバイがある」
ということであった。
警察は、まず、完璧なアリバイが存在すれば、
「この人間はシロだ」
と判断する、
犯罪において、一番容疑者から外れる優先順位としては、
「アリバイが鉄壁である」
ということであったり、
「指紋が一致しない」
などという根拠がハッキリとしている場合は、動機がどんなに深かったとしても、科学的に証明されれば、それ以上捜査することはない。
ということであれば、
「アリバイが成立したり、指紋が一致しなかったりすれば、その時点で、容疑者ではなくなり、他で致命的な何か犯人にとって都合の悪いことでもなければ、容姿はから外れるということになる」
ということである。
もちろん、警察も、
「実行犯が他にあるのでは?」
と疑うはずだ。そういう意味で、交換殺人は、そのリスクがまだあるので、実際に、主犯と実行犯が、まったくつながりがないという証明がなされなければ、
「完全に、犯人ではない」
ということにならない。
それが、この、
「交換殺人」
というものが、
「もろ刃の剣だ」
と言われるゆえんなのであろう。
そんな交換殺人であるが、、
「なぜ、交換殺人が、もろ刃の剣なのか?」
と言われるのかというと、交換殺人のメリットとしては、
「お互いに、犯人のアリバイを作っておいて、実行犯は、動機も何もないことで、そもそも、捜査線上に上がらないということで、実行犯も、犯人も、それぞれに、警察から疑われることはない」
ということであった。
しかし、今度は、デメリットとして、前述のように、
「実行犯と犯人の関係が警察にバレてしまうと、交換殺人は、その時点で破綻する」
ということになるのだった。
さすがに、
「警察だってバカじゃない」
というセリフを、よく刑事ドラマなどで聞くが、
「まさにその通り」
というべきで、
「交換殺人というものは、肝心なところがバレてしまうと、あとは、警察に看破されやすい」
といっていいだろう。
ただ、交換殺人が、
「現実には不可能なのか?」
というと、これは、心理的な面からも言えるのだった。
というのも、
「交換殺人で、犯人と実行犯の関係が知られないようにするには、必ず存在する、第一と第二の殺人が、関係のある犯罪である」
と思わせてはいけない。
これを、
「同一犯による連続殺人」
と思わせてもまずいだろう。
必ずその登場人物の中に、二人の名前が挙がるからである、
「ちょっとでも、関係があると思わせてはいけない」
ということから、
「それぞれの犯罪は、なるべく、時間を離して、場所も遠くである方が、望ましい」
といっていいだろう。
少しでも、
「関係がない」
と思わせるしかないわけで、そのためには、
「時間も、空間も、できるだけ遠くである必要がある」
というわけだ。
となると、第一の犯罪と第二の犯罪の間には、かなりの時間が存在する。その時、
「最初の犯人」
というものの考え方を整理すれば、
「俺が死んでほしいやつは、死んでくれた。しかも、俺には、鉄壁なアリバイがあるんだ。しかも、実行犯である相手しか、この計画は知らないのだから、俺が今度はリスクを犯して第二の犯行を行う必要などさらさらないんだ」
ということであろう。
もし、相手が警察に訴えたとしても、それは、事件のことを離さなければいけないわけで、自分はすでに、
「実行犯」
なわけなので、そもそも、警察に訴え出るなど、それこそ、自首でしかない」
そうなると、自分は、警察の捜査の蚊帳の外にいなければいけないのに、わざわざ警察に自首するようなことはしない。
そうなると、
「一人勝ちの状態」
になり、交換殺人というのは、あくまでも、
「お互いに平等な位置である」
ということから始まっているわけだ。
それを考えると、この関係は、平等でなくなった時点で、片方は、
「絶対に安全」
であり、片方は、
「地獄でしかない」
という状態で、それも、前にも後ろにも勧めないという、雁字搦めの状態になってしまうからだ。
「自殺をしたり、自首をするかも知れない」
という、切羽詰まった状態になれば、
「相手もろともの玉砕」
をしてしまうと、自分も
「一蓮托生」
になってしまうが。だからこそ、
「交換殺人」
というのは、現実ではありえないということになるのである。
さらに、交換殺人というものを考えた時、以前であれば、
「時効が来るまでの15年という歳月を、逃げていればいい」
というものがあった。
「15年という歳月が、どれほど、気の遠くなるような時期なのか?」
といっても、
「必ず、来るという有限なもの」
なのである。
しかし、今の時代には、時効というものが存在しないのだ。
つまりは、
「死ぬまで逃げ回らなければならない」
ということであり、完全に無限の状態である。
それよりも何よりも、一つだけ分かっているのは、
「殺人を犯してしまうと、捕まるか、死ぬか以外でなければ、逃げ回らなければいけない」
ということになるのだ。
「絶対に逮捕されない」
という保証があれば、その限りではないが、
「絶対に逮捕されない」
などということはない、
もちろん、迷宮入りになることはあるだろうが、その時、
「自分の立場がどうか?」
ということで別れてくるのだ。
というのは、
「自分がその時、指名手配されていれば、捕まる可能性は、かなり高くなる」
といえるので、それこそ、
「整形を施したり、指紋を分からないようにする」
などという小細工が必要であろう。
しかし、捜査線上の蚊帳の外であれば、基本的には、気にすることもないのだろうが、しかし、
「心にわだかまりを持った人間は、一度気になってしまうと、どんどんネガティブな方に気になってしまうのだ」
そこで問題になるのが、もう一人のことである。
連絡を取ることもできず、それこそ、死ぬまで、お互いにかかわりがないということにしなければいけないわけなので、そうなると、
「さらに相手の行動が、気になってしまう」
ということになる。
当然、気になるからといって、相手を探るようなことをしてしまうと、それこそ、どこから事件の真相が発覚するか分からないということで、何もできない。ただ、相手も同じことを思っているはずで、相手が同じように思っているとは限らないので、何か相手にとってまずいことが起これば、自分たちの立場を分かっているにも関わらず、連絡を取ってくるかも知れない。
そうなってくると、
「大きな山もアリの巣のような穴から、壊れていく」
というような話を聞いたことがあるが、まさにその通りではないだろうか?
「大山も蟻穴より崩る」
ということわざのごとくということである。
それを考えると、
「やはり、相手との連絡を取ってしまうということから、指名手配されるまでにならず、警察の捜査線上の蚊帳の外にいた」
ということであれば、慌てて、連絡を取ってしまうと、
「完全犯罪が、瓦解した」
といってもいいかも知れない。
「完全犯罪などありえない」
というのは、あくまでも、完全犯罪が、
「計算上」
ということであり、実際に、精神的なことを考えない場合のことになるということなのであろう。
そんな完全犯罪を完成させられないのは、やはり、
「相手に対しての、完全な拘束というものができない」
ということからであろう。
こっちが、一緒になって、
「お互いに対して、疑心暗鬼になってしまい、猜疑心の塊になってしまうと、結局、デメリットしか出てこないことになり」、
それこそ、
「百害あって一利なし」
ということになるのかも知れない。
「完全犯罪など不可能だ」
と言われるのは、こういう心理的な部分を、
「いかに克服できるか?」
ということが問題になるのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「交換殺人に、何か他のトリックを組み合わせることで、何とかならないか?」
と考えてしまう。
交換殺人というのは、
「これが、交換殺人だということが分かってしまうと、そこで犯行は終わってしまう」
ということで、本来であれば、
「密室トリック」
であったり、
「死体損壊トリック」
のような、
「最初から明らかになっている犯罪」
と一緒に考えることで、成立するものと一緒にすればいいのではないか?
と考えるが、どうもうまくいかないような気がする。
特に、
「死体損壊」
などというのは、この事件において、
「被害者が誰か分からない」
という必要はないのだ。
むしろ、被害者が誰なのか分からないということであれば、せっかく、鉄壁のアリバイを作ったのだから、被害者が誰なのか分からないということは、困るわけである。
つまり、ここでは、
「死体損壊と、交換殺人は成り立たない」
ということになる。
では、
「一人二役」
というのはどうであろうか?
交換殺人で一人二役というのは、実際に、交換殺人という性質上、
「二つの犯罪に対して、それぞれが、たすき状にかかわっているということで、これも、変則的とはいえるが、一種の、
「一人二役のトリック」
といってもいいのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「一人二役と、交換殺人」
というのは、
「交換殺人」
というものが持っている、
「もろ刃の剣」
と言われる性格を、補うことができるかどうか?
ということである。
実際に、以前読んだ戦後の探偵小説では、
「死体損壊トリック」
と、
「一人二役のトリック」
という合わせ技を行っていたのを思い出した。
やりようによっては、
「一人二役と、交換殺人」
ということもありだろう。
実際に、一人二役というと、一人で、二人分を演じるということだが、交換殺人というと、二人が、それぞれの役割を、2回にわたって行うということで、人数的には
「3人になる」
ということになる。
この3人というのは、
「三すくみになるのか、三つ巴になるのか?」
ということであるが、少なくとも、交換殺人においての力関係は、
「3人ともに、同じ」
ということではない。
必ず、
「最初に実行犯になった人間が不利だ」
ということになるのだ。
それを考えると、
「三つ巴」
ということではないだろう。
だとすると、
「三すくみ」
の関係に落ち着くのではないだろうか。
三すくみの関係というと、考えられるのは、
「抑止力」
である。
そういう意味では、
「交換殺人」
というのも、本来であれば、お互いに抑止することで、犯行に及べば、それこそ、
「完全犯罪」
というものになるのである。
完全犯罪というのは、
「お互いの抑止が利いてこその完全犯罪」
というものである。
「お互いに、相手のために犯罪を犯し、自分の殺してほしい人を、自分は、アリバイという隠れ蓑に隠れるということだ。
これは、ある意味、
「死体損壊トリック」
と、
「一人二役」
にも言えるもので、
この二つが融合すれば、
「どちらかが被害者で、どちらかが犯人」
ということになる。
犯人を、
「この人物だ」
と確定し、全国に指名手配をしたとしても、犯人が一人二役を演じていたとすれば、犯人の策略で、まったく表に出てきていない被害者を捏造したとして、犯人を、一人二役の架空の人物だと思い込ませれば、
「この世に存在しない人物が、警察に逮捕されることはない」
というわけだ。
しかし、この場合、架空の殺された人物は、本当に、
「犯人にとって、死んでほしい人物だった」
といえるだろうか。
確かに、
「自分の身代わり」
ということであれば、しょうがないということなのかも知れないが、犯人としては、どうしても、
「死んでほしい人物ではない」
という人を殺すことになるというのは、理不尽なことであろう。
大体の
「一人二役」
と、
「交換殺人」
というものが絡んだ犯罪が行われたということであれば、
「犯人は、自分が死んだことになりたい」
ということが一番のはずである。
だから、架空の人物を捏造し、その人物によって、自分が殺されたことにすれば、前述のように、
「犯人が警察に捕まることはない」
とことであり、
「自分が、この世から消えてしまう」
ということも達成できるのだ。
この場合、どっちが、大きな目的なのかというと、
「自分がこの世から消えてしまう」
ということが目的であろう。
しかも、犯人が捕まらないということは、
「迷宮入りになる」
という可能性が高い。
一度なってしまうと、
「警察は。何かの決定的な証拠でもないと、再捜査はしないだろう」
どのような場合に再捜査になるかというと、
「どこかのお店かどこかに、空き巣が入ったとして、その時に指紋の採取が行われたが、その時、偶然に、犯人と思われた人物の指紋が出てきた」
などという、
「本当の偶然が重ならなければ、なかなか警察が再捜査などはしないだろう」
ドラマなどでは、
「時効数日前だった」
などというオチだったりするのだろうが、今の時代では、そんなことはない。
なぜなら、
「凶悪事件の時効は廃止されたからだ」
ということである。
今までは、15年間が、殺人における時効であったが、今では、時効は存在しない。犯人になってしまえば、
「死ぬまで逃げ続けなければいけない」
ということである。
今までは、時効があったので、15年以上の事件は、捜査資料くらいは残しているだろうが、
「未解決事件」
としては、カウントされない。
しかし、今はそれまでカウントするわけなので、どれだけの未解決事件があるかということは、よく分からないといってもいいだろう。
時効がないということは、それだけ捜査する方も時間があるわけだが、犯人が捕まる可能性が増えたわけではない、むしろ、
「犯人が捕まらないということで、検挙率が、ガクッと下がるということになるだろう」
分母だけが増えて、分子は増えないのだから、下手をすれば、最後の、
「限りなくゼロに近い」
ということになるのではないだろうか。
「交換殺人」
が、完全犯罪の
「もろ刃の剣」
ということであれば、
「一人二役と、死体損壊トリック」
というものも、
「もろ刃の剣ではないだろうか?」
もし、逃げているのは、本当の犯人だと看破していれば、犯人は追い詰められることになるだろう。
しかし、死体損壊なのだから、
「被害者と加害者がどっちだ?」
ということは言えないであろう。
となると、犯人を確定できないということになり、
「一人二役をした」
という意味がなくなってしまう。
これでは、ただの、
「警察をかく乱する」
ということになるだけではないだろうか。
警察をいかにうまく誘導するか?」
ということが大切なのであって。
「下手に、かく乱させてしまうと、考えてもいないという、あてずっぽうで、犯人を指し示すことになるのではないだろうか?」
警察というものをいかにかく乱させるかということが、犯人の意図ではない。そうなると、一人二役が、もろ刃の剣だ」
ということになるのも、当たり前ということである。
「三すくみ」
というのが、
「抑止力」
ということであるように、
「交換殺人」
というのが、
「完全犯罪へのパスポートの中に、もろ刃の剣というものを抱え込んでいる」
といってもいいだろう。
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