第11話
「───レモーネ公爵令息。うるさいですよ、少しお黙りなさい」
「お、俺を誰だと思っているんだ!」
「そうですね、平民に落とされた無能の元公爵家嫡男でしょうか」
「平民!?そ、そんなはずは……!」
「「平民に落とされた元公爵令息」になるかどうかは今からの公爵夫妻と貴方の言動によるでしょうけど、今のその態度だと不敬罪で平民落ちどころではないかもしれませんね」
この方こそ、私のことを誰だと思っているのでしょうか?自分で言うことでもありませんが隣国の皇女ですよ。そして皇太子の婚約者。すでに三ヵ国の間では知れ渡っていることですのにお忘れなのでしょうか。本当に無知無能ですね。そんなだから身分の釣り合わない令嬢と浮気をしてこのような騒動に発展させてしまうのですよ?
恋物語だと身分に大きな差がある男女でもそれを乗り越えて大恋愛の末に結婚──なんて展開になるのかもしれませんが、所詮は物語です。現実でそれを実現させるなら国中の誰よりも優れた何かの実力があったり、本当に特別な理由でもない限りあり得ません。この貴族社会で覆すことの出来ない身分差を埋めるほどの何かを、貴方たちは持っていなかった。
だからここではより身分の高い私たちを怒らせることは得策ではないと思いますよ。
「今回の件、非常に不愉快ですけれど私は当事者です。当事者の中で一番身分が高いのが私です。これがどういうことか、貴方には分かりますか?」
「……俺はお前に従うしかないと?」
「その通りです。それに私は被害者ですもの、今回の件をどう収めようと私に文句を付けられる人は誰一人としていないのですよ」
より現実を受け止められるように敢えて淡々と告げてみると、ようやく本当の意味でこの状況を理解してくださったのか彼の表情が絶望に染まりました。
私が言った「誰一人として」の中には王国、帝国、大帝国の皇帝陛下も入っていることをちゃんとお分かりのようですね。国王陛下は以ての外ですけれど、両国の皇帝陛下は私に文句を付ける理由もないでしょうし、むしろ重い罪であればあるほど喜ばれそうです。お怒りだと聞きましたからね。
「私も出来ることなら血生臭い方向に罪を変えたくはありません。先ほどまでのことは見逃します。貴方が冷静でいられるかどうかで今後の人生は変わってしまいますのでそのことをお忘れなく。それでは話を戻しましょうね、レイモンド様?」
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