第10話
「カティアへの無礼、レモーネ公爵令息はどう償うつもりだ?謝罪すらされていないが」
「レイモンドには、」
「公爵には聞いていない。令息に問うが、まさか謝罪で済ませるつもりはないだろう?」
「ど、どうすれば良いのでしょうか……?」
「……失礼だが、彼に公爵家を継がせるのはやめた方が良いのではないか?これくらいのことを、自分で仕出かしたことへの償い方でさえ考えられないような人間を、国にとっての大きな役目を担う公爵家を継がせても家を潰すだけだと思うが」
あら、お父様名案ですね!こんな人たちに助言して差し上げるお父様は普通に考えたら優しいと思いますけれど、本当にそうなったらレイモンド様は堪ったものではないでしょう。彼はご自分の次期公爵家当主という肩書にかなり執着しているようでしたし。
お母様やお兄様達もそれが良いと頷いていることですし、私も便乗しても良いですかね?レイモンド様にとっては十二分に罰となるに違いありません。本音を言うのであれば、こんな爵位だけの役に立たない家なんて潰れてしまえば良いと思いますよ?それでも歴史のある家ですし、レモーネ公爵家が没落することで困る人もいるはずです。彼らに罪はありませんからやっぱりこのくらいが良いのでは?
「っ、それは……!」
「お父様、レモーネ公爵家の皆様の処分は私が決めていいのですよね?」
「ああ、構わないが何かいい案でもあるのか?」
「お父様がおっしゃっていたように、レモーネ公爵家の跡取りの座を彼から剥奪してはどうかと思いまして。レイモンド様より優秀な弟君がいますからちょうど良いのではないでしょうか。弟君だけは私に良くしてくださったので巻き込んでしまうのは申し訳ないのですが……」
弟と言ってもレイモンド様の双子の弟君です。レイモンド様と違って優秀でいらっしゃいますから、アルバート皇太子殿下の国に留学へ行っておられてこの場にはいませんが。
「そうだな。私もそれが良いと思う。レモーネ公爵、カティアもこう言っていることだし、そちらは跡取りの座を移し公爵らは爵位を譲って隠居する。我が家が譲歩できるのはここまでだ。不敬罪で処刑することも可能だということを頭に入れた上で、良く考えてみると良い」
「だ、旦那様……」
「…分かっている」
あら……渋るかと思ったのですがそうでもなさそうですね?お父様が脅したからでしょうか。でもお二人はそれで良いとして……この騒動の原因であるレイモンド様が黙っている、なんてことはないでしょう?
「待ってください父上!公爵家を継ぐのは俺です!元はと言えばカティアが俺好みの女であれば浮気なんてしなかった……!悪いのはカティアの方です!!」
やはり私が予想した通りの反応ですね。当然です、私はレイモンド様が一番嫌がることだというのを理解していて提案しましたもの。
それでも責任転嫁が過ぎますね。私は彼のご機嫌取りでもすれば良かったのですか?そんなの絶対にお断りですよ。誰が婚約者とはいえ嫌いな相手の機嫌を取るものですか。
こんな感じだから嫌いなのです。もはや彼に対しては包み隠す必要がなさそうですね。
「父上、マズいですよ。カティアが怒っています」
「……私は知らない。あまりにも酷いようならアニエスが止めてくれるはずだろう」
「ちょっと旦那様!わたくしは関係ありません!」
……お父様方、コソコソ話さなくても全部聞こえてます。
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