第三章

第1話 速報

 翌朝。時計は午前10時を指している。

 氷室は自宅マンションで登庁準備をしていた。今日は昼前に捜査会議がある。それに間に合うように登庁するつもりである。

「っつ……」

 頭が痛い。

 昨夜は随分と夢見が悪かったような気がするが、どんな夢を見たのか覚えがない。

 ミネラルウォーターで鎮痛剤を飲み下し、入れ替わりに冷蔵庫からアイスコーヒーのボトルを出す。

 沢山氷を入れたグラスを用意したら、そこへたっぷりと注いでいく。

 氷は贅沢に、目一杯入れるのが氷室は好きなのだ。

 朝食はイングリッシュマフィンをトーストしたものと、カット野菜のサラダが定番である。

 それらを、スマホでニュースのチェックをしながら食べるのが朝のルーティンだった。

 今朝も同様に朝食を食べながらスマホを眺めていると、画面がニュースから森永の名前に切り替わった。

 それを見た途端、溜息が出る。

 氷室は画面をタップし、スピーカーにした。

『森永です』

「おはようございます」

『早くにすみません。佐伯の車から採取されたDNAと、第三の殺人、モナ・リザのDNAが一致したと連絡があったので、いち早くお知らせしようと思いまして』

 マフィンを口に運ぼうとした氷室だったが、その手が止まった。

「となると、佐伯が犯人で間違いないと」

『それなんですが──』

 森永がはっきりしない。

 氷室は手についたコーングリッツをはたいた。

 その眉間には皺が寄っている。

「どうしたんです? 何かあったんですか?」

 心がざわざわした。

 早く言ってくれと、酷く落ち着かない。


「なんですって?」

 

 衝撃の報告に、思わず氷室は立ち上がった。

 そしてスマホを引っ掴むと、殆ど手を付けていない朝食をそのままテーブルに残して、部屋を飛び出して行く。

 もう一度、森崎健吾に会わねばならない。

 氷室は自家用車に飛び乗った。

「あの野郎──」

 エンジンを掛ける氷室の脳内で、森永の声がリフレインした。

 

 

 ──佐伯の車は、元々森崎健吾が所有していた物であることが分かりました。

 



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