第8話
石室にて、3人はテーブルの大きい円の方を囲んでいた。
「多分、これが台座なんだ」
カルパが着目したのは、大きい円の盛り上がった部分だった。
「ここに置けばいいのか?」
「そう。おそらくこのバッタには、いわゆる
〈神々〉が宿っているんだ。〈神格物〉とでも言おうか。
そして、この〈神格物〉からは〈恩恵〉が得られる、という推察が成り立って、この台座が、そのための装置だと思うんだ」
「なるほど。それで、呪文は?」
「また呪文?」
「うん。ジュモンダイジ」
「どうして片言なの?……まあ呪文なら、結局さっきもいらなかったし、これもおそらくいらないよ。
そもそもまだこれが正解かもわかっていないし、あとにしてもらっていい?」
「ええ~。仕方ないなぁ」
フィトは渋々、光るバッタをテーブルの中心に置いた。
するとすぐに、バッタがこれまで以上に強く光り始めた。
やはり呪文は必要なかった。
一堂は「おおーっ」と驚きの声を上げ、その動向を見守った。
バッタの光は、強さもそのままに台座へと移り、台座全体に広がった。
そしてひとしきり光ると、小さい円の方へ、溝を伝って移っていった。
その光が残り時間に変わるのは、もう間違いなさそうだった。
気になったのは、どのくらい増えるかだ。
2人は期待に胸を膨らませ、1人はスナック菓子を頬張りながら、結果を待っていた。
光は、小さい円の切れ込みに到達すると一度消え、少し間を置いてから、内側の浮き上がった部分を光らせた。
焦らされ、自ずと期待感も高まった。
そして次の瞬間、石室に、石がこすれる音が少しだけ響いて、光が消えた。
それは本当に "少しだけ" だった。
「えっ?…終わり?」
カルパが目を丸くした。
「―クエタ?」
「…な~に~?」
「時間を見て」
「ああ、そうか~」
クエタの目が光った。
「―20分くらい増えてるかな~」
「20分…。少なくない?」
「ちょっとだけだったね~」
「少な~い」
言いながら、フィトが楽しげに笑った。
しかしカルパの顔は険しかった。
「笑っていられないよ。1日にバッタ72匹分が必要なんだよ?」
「楽勝だろ」
「バッタがいたらね。でも神様に喩えられるくらいだから、多分、出現は限定的なんだ。
どのくらいいるかわからない中で、楽観視は命取りになるよ」
「よし。じゃあ頑張る」
イマイチ深刻さが伝わっていない気がしたが、フィト相手にはそんなものだ。カルパは気を取り直し、これからの話をした。
「まあ、ルールはわかった。あとはどれだけ攻略できるかだ。現状、急ぐ必要がある」
「バッタを集めに行くんだな」
「ううん、まずは町に行こう」
「どうして?バッタ探しは?」
「僕に思うところがあってね。それが正しければ、必要なのはバッタ探しじゃないんだ。だからそれを確かめに行くんだよ」
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