第7話

「これからどうしようか」


「フィトの〈霊験〉?を考えるんじゃないの~?」


「それも含めて、何に時間を使うか考えないと。…5日間だよ?5日間。……ホント、2人には申し訳なさしかないよ」


「何が~?」


「僕のせいで、あと5日間しか生きられないことがだよ」


「違うよ~。カルパのせいじゃないよ~。これは~、3人でやったことだよ~」


「何言ってるの。原因を作った僕の責任だよ!」


「でも~、カルパは見るだけのつもりだったんでしょ~?こうなったのは手形に手を置いたからだよね~?じゃあ~、それをやろうって言ったのはフィトじゃない~?ボクも一緒にやったから仲間だし~」


「一緒にやったのは僕もだよ」


「そうだね~。みんな仲間ってことだね~。…で~、何の話だったっけ~?」


「…もういいよ。なんだか時間の無駄に思えてきた。それより、この5日間をどうするか話そう。せっかく力を手に入れたんだ。いい使い道があるかもしれない」


 カルパは話の流れで、フィトのことではなく、自分たちの〈霊験〉の使い道を考え始めた。


 その一方でクエタは、他のことが気になっていた。


「ねえ~。この力って、神様の力なの~」


「どうして?」


「さっき、『神々の恩恵』って言ってたから~」


「ん~、どうだろう…。便宜上、そういう表現にしただけじゃないかな。伝われば、エネルギーとか、擬人化されない表現でも問題はないと思うよ」


「そうか~。じゃあ~、神様は関係ないんだね~」


「関係があったらどうしようと思ったの?」


「みんな名前があるのかな~って」


「みんな?」


「だって~、ボクたちは使える力がそれぞれ違うから~、それだけ神様がいるってことでしょ~?」


「そうとも限らないよ。1人の神様が全部使える可能性もあるんじゃない?」


「そっか~、1人かもしれないんだ~」


 クエタは納得させられたが、言った本人はその誤りに気づき、眉根を寄せた。


「いや、1人のはずはないのかな」


「どうして~?」


「だって『神々』は複数形でしょ?なら最低

でも2人。単純計算で3人。ともすればここ以外にも、神様にあたる存在がいるのかもしれない!」


 カルパが興奮気味に、目を輝かせて言った。


「そうなんだ~。でも~、いたらいいことあるの~?」


「重要なことだよ。僕も、『神々の恩恵がなくなったら』って表現には、違う意味で違和感があったんだ。最初から長さが決まってるのなら、そんな曖昧な表現にする必要があるのかなって。


 でも、他にも『神々』が存在するのなら、その曖昧さにも説明がつくんだ。つまり、それらの恩恵も、継ぎ足すことができるかもしれないんだよ。


 その仮説があっていれば、僕らの残り時間飛躍的に伸びる可能性さえあるんだ」


カルパはいつになく饒舌だった。


 一方クエタは、話を理解しているのかどうか、相変わらずの通常運転だった。


「でも~、そんなのこれまで見たことないけど~、本当にいるの~?」


「問題はそこだよ。本当にいたとしても、どんな形で存在しているのかもわからないから、見つけられるかどうか…」


 そうカルパが懸念を口にした直後、遠くでフィトが「おーい」と呼びかける声が聞こえた。


「えっ?さすがに早過ぎない?」


 不思議がるカルパに、まだ遠いフィトの声が届いた。


「草原でスゴいバッタ捕まえたんだ」


(バッタ?そんなもので喜んでるヒマないのに)


カルパはムッとしたが、フィトは嬉々として続けた。


「これ全身が光ってるんだよ」


 それを聞いてカルパとクエタは目を見合わせた。


「それだ!」


「…それかも~」


 2人の声はそろわなかったが、気持ちは確かにシンクロしていた。

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