第90話

―――いいかい、桜子?




父さんがこれから言うことを守ってくれるかい?




―――なぁに、父さん?







幼い私は首を傾げる。




父は困った顔をして言った。







―――お前が大きくなって、誰かを愛する時が来たら、父さんは恋愛結婚でも構わないと思っている。




このご時世、恋愛結婚だなんてとんでもないという人もいるけれど、お前が幸せならば誰と結ばれてもいい。




けれど、これだけは約束しておくれ。







父の強い声音に私は頷く。




意味も理解出来ず、ただ無邪気に。




どういうことかさっぱりわからなかったけれど、とてもとても大切なことなんだと納得していた。







―――いいかい、桜子。誰を好きになっても構わない。





けれど。





身分違いの恋だけは、決してしてはいけないよ――――。

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