弐章 突然ナルハ、藤ノ宮ノ誘イ

第23話

絢爛豪華な屋敷を前にして、桜子は今すぐ回れ右をしたくなった。




しかし、それは無理なことだと、ここに来た桜子が一番よく知っている。




何しろ精緻な装飾の施された門から屋敷まで自動車で約数分。




その間窓から見えたものと言えば、延々と続く庭園。




白と黒のお仕着せを着た使用人たちが立ち並ぶ中、桜子は背後の白木に助けを求めた。




「こちらでございます」




無言の訴えに気づいているのかいないのか、白木は完璧な笑みで桜子を屋敷の中へと誘う。




扉を開けた瞬間、目の前に広がるのは広い玄関と高い天井にぶら下がる照明―――シャンデリアだ。




吹き抜けとなっている二階を見上げ、桜子は愕然とした。




(ひ、広い……)




床に敷かれた絨毯に目を落とし、これは土足で踏んで良いのかと半ば本気で悩んだ。




場違いなことこの上なく、居たたまれない。




……どうしてこんなことになっているのだろう。




目の前の光景に圧倒され、現実逃避の如く、桜子はこうなった経緯を思い出す。




―――事は、女学校からの帰りに起きた。

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