第20話

どうすればいいのかわからず、背後にいる父に助けを求める。




が、困ったような笑いを返されるだけだった。




(父さん―――……)



「それで、失礼ながらお伺いしたいことがあるのですが……」




父の反応に肩を落としていた桜子は、白木の声にはっと我に返った。




「は、はい!何でしょうか……?」




何を言われるのかとびくびくしながら白木を見ると、柔らかい笑みを返される。




その笑みに幾分かほっとし、桜子は少しだけ緊張を解いた。




「実は、猫を探しているのです。銀の鈴と紅い紐をつけた黒猫なのですが、こちらにそれらしき猫がいると聞きまして……。もしかしたら、わたくしどもが探している猫かもしれないと思い、伺った次第です」



「猫……」




銀の鈴に紅い紐の、黒猫。




白木の言葉に桜子ははっとした。




もしかして、と身を乗り出す。




「飼い主の方ですか?」



「はい。お仕えする方の大事な猫なのですが、わたくしどもの不注意で逃げ出してしまいまして……。似た猫がこちらにいると聞き、もしかしたらと思い……」




気まずそうな白木の言葉に納得し、桜子は頷いた。




「銀の鈴に紅い紐のついた黒猫ならいます。少々お待ちください……!」




この時間なら縁側で寝ているはずだ。




そう思い、桜子は鈴鳴を探しに縁側の方へと駆け出した。

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