第19話
何が起きたのかと桜子は慌てて台所から外へと出た。
家々が建ち並ぶ細い通りに面している小ぢんまりとした門に向かい、そこで桜子は絶句した。
およそ、このような家屋群の建ち並ぶ場所にはあまりに場違いな黒服の男性が一人、品よく立っていたのである。
壮年と呼ぶのが相応しく、上品と言うのが当てはまる初老の男性。
まるでどこかの屋敷の使用人のようだ。
呆然と立ち尽くしていれば、桜子の姿に気付いた男性が静かに話し掛けてきた。
「日崎桜子様にございますか?わたくし、藤ノ宮家の使用人をしております、
「い、いえ……あの、何の御用でしょうか……?」
(……藤ノ宮?)
どこかで聞いたことがあるような名に首を傾げる。それもつい最近。
咄嗟に思い出せず、更には白木と名乗った男性の慇懃な態度に戸惑う。
そうしている間にも異変を感じたのか、近所の人々が玄関や門から顔を覗かせこちらを見ているのが見えた。
それに気付き、桜子は慌てて白木を見上げる。
「あの、こんなところではなんですし、中へどうぞ……」
「いえ、ここで構いません。お気遣い、ありがとうございます」
優しげながら完璧な笑みを返され、桜子はますます反応に困った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます