第18話

鈴鳴がやってきてから数日。




家事に加え、桜子の仕事には鈴鳴の世話が加わった。




とは言え、猫というのはひたすら自由な生き物だ。




ふらりと姿を消し、たまに膝の上で眠っていると思えば縁側でうとうとしており、手の掛かるようなことは何ひとつない。




その姿に不思議と心が和み、いつしかその光景が当たり前となっていた。




そんな日常にもやがて慣れ、平穏な日が幾日か過ぎた頃―――それは、唐突にやって来た。




「……桜子」




それは、桜子が昼食の後片付けをしていた時のことだった。




食器の水気を拭っていれば、台所の勝手口から父が顔を覗かせ、思わず手を止める。




「ど、どうしたの、父さん?」




父は柔和な顔を少し曇らせて、門の方を指差した。




「お客さんなんだが……」



「お客さん?出版社の人?」




この家に来るのは近所の人か雑誌の編集者、それに佳世くらいだ。




それも縁側や勝手口にいつの間にか上がり込んでいるため、門を使うお客というのは珍しい。




桜子の言葉に父は困った顔を作り、「とにかく早く来てくれ」と桜子を急かす。

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