第18話
鈴鳴がやってきてから数日。
家事に加え、桜子の仕事には鈴鳴の世話が加わった。
とは言え、猫というのはひたすら自由な生き物だ。
ふらりと姿を消し、たまに膝の上で眠っていると思えば縁側でうとうとしており、手の掛かるようなことは何ひとつない。
その姿に不思議と心が和み、いつしかその光景が当たり前となっていた。
そんな日常にもやがて慣れ、平穏な日が幾日か過ぎた頃―――それは、唐突にやって来た。
「……桜子」
それは、桜子が昼食の後片付けをしていた時のことだった。
食器の水気を拭っていれば、台所の勝手口から父が顔を覗かせ、思わず手を止める。
「ど、どうしたの、父さん?」
父は柔和な顔を少し曇らせて、門の方を指差した。
「お客さんなんだが……」
「お客さん?出版社の人?」
この家に来るのは近所の人か雑誌の編集者、それに佳世くらいだ。
それも縁側や勝手口にいつの間にか上がり込んでいるため、門を使うお客というのは珍しい。
桜子の言葉に父は困った顔を作り、「とにかく早く来てくれ」と桜子を急かす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます