第17話

その後、暴れる猫と格闘しながら汚れた毛並みを綺麗にし、『鈴鳴すずなり』という仮の名をつけた。

 



改めて見ると、本当に美しい猫だった。




毛並みは艶やかで光沢を放ち、動作も心なしか気取っているように思える。




どこぞの金持ちの飼い猫なのだろう。




それを証明するかのように残飯には口をつけないし、水も代えたものしか飲まない。




ただ、やはり猫は猫で、今も先ほど探し出してきた毛糸玉にじゃれついている。




「ご主人が早く見つかるといいわね」




なつきはしないが、桜子のことは餌をくれる人間だと認識しているらしい。




お愛想程度に擦り寄ってきては離れて行く。




付かず離れずの関係はなんとも心地好くて、鈴鳴は不思議にすんなりと日崎家の日常へ馴染んでしまった。





―――ただ出逢いが唐突だったゆえに、別れもまた、唐突ではあったけれど。

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